ここでは既存建築物ZEBの実現に役立つ資料を掲載します。
既存建築物ZEB化可能性調査仕様書
既存建築物ZEB化の進め方
既存建築物のZEB化の進め方の簡単な説明は以下のとおりです。
- 建物の選定: 設備の状態や建物の使用状況を確認し、ZEB化に適した建物を選びます。
- ZEB化可能性調査: 現在の建物のエネルギー性能や設備状態を詳しく調べ、ZEB改修の計画を立てます。
- 計画の承認と共有: 作成した計画について関係者全員で合意し、方針を共有します。
- 設計: 具体的な改修設計を行い、ZEB認証を取得します。
- 施工とZEB性能管理:工事を担当する施工業者を選定して施工します。設計からの変更があってもZEBの性能が維持していることを確認します。
- 竣工後の確認と運用: 竣工図でZEBの性能が維持できていることを確認します。適切な運用を図り、室内の快適性向上と脱炭素を実現します。
既存建築物ZEB化可能性調査の重要性
既存建築物のZEB化を計画的に進めるには、事前に現状の建物のエネルギー性能や課題を詳しく調査することが重要です。
既存建築物ZEB化可能性調査を実施することで、省エネやコスト、快適性に関する課題をあらかじめ把握できます。
その結果、関係者全員が納得した上で計画を立てやすくなり、プロジェクトの成功率が高まります。
既存建築物のZEB化には、質の高い既存建築物ZEB化可能性調査をすることが重要です。
既存建築物ZEB化可能性調査仕様書
既存建築物ZEB化可能性調査は、調査を行う事業者によって、調査結果の品質に大きく差が出てくる内容になります。
- 高品質な調査結果の場合、現実的で経済的なZEB改修案が提示され、実現に向けたスケジュールが提示されます。
- 低品質な調査結果の場合、非現実的なZEB改修案が提示されて、経済性、スケジュールが提示されず、ZEB実現に寄与しません。
低品質な調査結果を避けるためにも、既存建築物ZEB化可能性調査の事業者を選定する際は、プロポーザルで事業者を選定することが望ましいです。
一方で、選ぶ側も高品質な調査結果が得られるような事業者を選択するために、既存建築物ZEBの実現に関して知識を持っておく必要がありますが、それは現実的に難しい事が多いです。
そこで、ZEB可能性調査の調査結果がZEB実現に寄与するために、必要な調査内容を網羅した既存建築物ZEB化可能性調査の仕様書を作成しました。
こちらに記載の内容を誠実に実施することが、ZEB実現性を高めるために重要です。
ダウンロードはこちらから 既存建築物ZEB可能性調査仕様書
既存建築物ZEB化可能性調査対象建物の選定
既存建築物ZEB化可能性調査を行う建物は、以下の条件にあう建物を選ぶことが重要です。
- 今後5年以内に建物設備の全体更新(特に主な空調設備更新)の予定がある建物
- 建物の管理担当者が設備更新に前向きである
簡易既存建築物ZEB化改修経済性分析ツールを活用して、事前に導入コストや経済性の目安をつけ、本ツールを用いて関係者にZEB改修の見通しを説明すると、既存建築物ZEB化可能性調査の予算化、その後のZEB改修の事業化がスムーズに進みます。
また、以下の建物は避けましょう。
- 部分的に改修を目指す建物(基本的にZEBは1棟単位での扱いになります1。)
- 竣工図がない建物
- テナント
- 改修工事のイニシャルコストの抑制が第一目標の建物
ZEB改修は、補助金が入ってもイニシャルコストは通常の改修より高くなることがほとんどです。長期的な総合コストはZEBのほうが低くなることが多くあります。
既存建築物のCO2削減効果
既存建築物をZEB改修した場合は、新築ZEBより、より多くのCO2削減することに繋がります。
新築(建替)ZEBの場合は、建築、解体などにより、多くのCO2が排出されます。ZEBでは運用時のCO2排出量が少ないため、建物のライフサイクルに占める建築、解体のCO2排出量が無視できない大きさになります。ZEB化改修は、その排出量を避けることができます。
建物60年利用の場合
Whole Life Carbon(建物の資材製造、建設から廃棄までの建物に関係するCO2排出量の合計。WLCという。)を比較したケーススタディ結果を示します。平均WLCは、WLCを建物使用年数で割った値になります。
平均WLC
「ZEB改修」築23年の建物をZEB改修して37年使用した場合:93.7kg-CO2/(m2・年)
「解体建替」解体、建替をして60年使う場合:115.7kg-CO2/(m2・年)
「継続使用」現性能で改修して37年使用する場合:158.5kg-CO2/(m2・年)
「継続利用」と比較した平均WLCは、「ZEB改修」が41%減、「解体建替」が27%減となります。
ZEB改修のCO2削減効果は、新築(建替)より圧倒的に高くなります。
出典:J-CAT使用登録者向け限定講習会『建築物ホールライフカーボン算定ツール:J-CAT』~算定ツールを用いた多様なケーススタディ~第4回 J-CATを使ったケーススタディ(4)2024年6月26日 掲載のデータをもとに弊社作成。
ZEB改修工事にかかる排出量は資材製造・建築施工に含まれる。
建物80年使用の場合
上記データを用いて、建物を80年稼働の場合を推計しました。解体建替を80年使用、ZEB改修、継続使用は43年目から37年利用としました。解体建替の資材製造、建築施工と解体のWLCに60年/80年をかけて推計しました。
「継続利用」と比較した平均WLCは、「ZEB改修」が41%減、「解体建替」が30%減となります。
建物80年使用の場合でも、ZEB改修のCO2削減効果は、新築(建替)より高くなります。
出典:J-CAT使用登録者向け限定講習会『建築物ホールライフカーボン算定ツール:J-CAT』~算定ツールを用いた多様なケーススタディ~第4回 J-CATを使ったケーススタディ(4)2024年6月26日 掲載のデータをもとに弊社作成。
ZEB改修工事にかかる排出量は資材製造・建築施工に含まれる。
注釈
- 延床面積が1万㎡を超えると、建物用途別に検討することも可能になります。 ↩︎